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​研究会の研究内容

 福島復興政策研究会では、主として以下の4つの観点から、福島復興政策のあり方や福島復興のあり方について研究しています。

 原子力災害からの復興に関する総合的な検証を行うためには、少なくとも、これらの4点に関する課題に取り組むことが必要だと考えられます。

 国、福島県、市町村、住民などが協働して総合的な検証を行うことが求められており、そうしてこそはじめて福島の本格的な復興・再生に向けた課題を抽出することができ、その道筋を描くことが可能になると考えられます。

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01

​福島原発事故の発生の原因の究明と責任の所在の解明

 福島原発事故は、なぜ発生することになったのか、その原因の究明と責任の所在の解明が必要である。原発事故の発生の原因としては、安全神話、その裏返しとしてのリスク管理のあり方、原子力災害対策の欠陥などが挙げられるが、こうした原因の究明が必要である。また、責任の所在については、東京電力にあることは当然であるが、国の責任の性質や範囲のほか、福島県、立地市町村、その他の市町村、福島県民、さらには広く国民にまで射程を広げて問い返され、解明されるべきである。

02

​福島原発事故の被害実態の包括的・総体的な把握と追究

 第二に、福島原発事故は、誰にどのような被害を及ぼしたのか、その実態の包括的・総体的な把握と追究が必要である。被害者は、避難指示の発令に伴って避難を強いられた避難指示区域内の住民だけではない。避難指示区域外であっても、放射能への恐怖や不安などを理由として、いわゆる自主避難者が相当数にのぼることになり、避難しなかった住民も、さまざまな被害を受けながら福島で暮らし続けてきたことは広く知られているとおりである。さらに、放射能は福島県を越えて広く拡散したので、この避難指示区域外の住民が受けた被害の問題は、福島県外の住民が受けた被害の問題と重なる面がある。被害の内容については、原発事故に伴う放射能被曝をはじめ、放射能への恐怖と不安、長期にわたる避難生活、原発事故前に暮らしていた場所での日常生活、いわば場所生活の喪失、被害の実態と乖離した避難指示区域の指定のあり方と連動した賠償基準の違いによる地域の分断、人口の減少や避難指示解除後の帰還人口の伸び悩みによる自治体の存続危機など、人や地域によってさまざまであって、こうした多様な被害の実態の把握と追究が必要である。

03

被災者の生活再建と被災地の復興・再生に関する到達点の解明と実現方策の検討

 第三に、福島原発事故の被災者の生活再建と被災地の復興・再生はいかに図られるべきか、既往の福島復興政策の問題点を解明しつつ、被災者と被災地の実態に即した課題の抽出が必要である。これまでの福島復興政策は、しばしば、国家主導で住民不在、ハード偏重でソフト軽視、旧態依然の単線型、スケジュールありきで実態軽視など、さまざまに形容されている。これらに対置されるべき復興政策として、複線型の復興政策などが提示されているが、いずれにせよ、これまでに進められてきた福島復興政策を批判的に検証しつつ、事故収束(廃炉・汚染水対策)、放射線防護、防災、避難、住宅、雇用、産業、医療、健康、福祉、介護、教育、エネルギー、自然・生態系、財政、賠償、地方自治、広域行政といった総合的な視座から、被災者の生活再建と被災地の復興・再生に向けて、被災者と被災地の実態に即した課題を抽出することが必要である。

04

原発事故の再発防止策と再発した場合の被害の最小化策の合理性に関する確認

 第四に、原発事故の再発を防ぐためにはどのようにすればよいか、また、再発した場合に被害を最小限にとどめるためにはどのようにすればよいか、福島原発事故の教訓を踏まえた原子力災害対策の改善が必要である。原発事故の再発防止に向けては、脱原発や再生可能エネルギーへの転換もさることながら、福島原発事故の教訓を明確にするためにも、福島原発事故に関する検証のみならず、今なお実施されていない原子力災害に関する検証が必要である。また、再発した場合の被害の最小化という点では、事前復興の取り組み、情報伝達のあり方の見直し、避難計画の実効性の検証などが挙げられるが、これらを体系化した原子力災害対策基本法の制定や恒久組織としての防災・復興省の設立などが考えられる。

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